[2-2-1]  地形と気候  Ver.6.00

 北海道の気候は、日本海側、太平洋側、道央地方、オホーツク海側で大きく
異なります。

 北海道全体ではほぼ亜寒帯(冷帯)に属し、離島を除いた全道の年平均気温は
プラス6〜10℃程度、年平均降水量は800〜1500mm程度…ということになるので
すが、太平洋側を冷たい海流が、日本海側を暖かい海流が流れているため、そ
れぞれの影響で気候には大きな差があります。

 本州以南と違って梅雨がないので、5月から7月は非常に過ごしやすい季節と
なります。しかし運悪く太平洋高気圧の気合 :-)が足りない年には、本州では
最も暑い8〜9月に道内では雨ばかり降ります。これを「えぞ梅雨」と言います。

# 本州から北上してきた梅雨前線がサハリン付近まで押し上げられた状態が、
#短い「北海道の夏」なのです。

そして太平洋高気圧にさらに気合が不足していて、本州東北地方でも梅雨が明
けなかったりすると、大抵の場合は全道的に冷害に見舞われます。

 また、台風の影響も殆どないのですが、数十年に一度はやって来て被害をも
たらしますし、北海道までの往復のフェリーや飛行機に影響が出ることも珍し
くありません。そして台風が過ぎると、道内は急に秋が深くなります。

 基本的に四季の変化ははっきりしていますが、地形や位置、海流、季節風な
どにより、地域によってかなりの気候の違いがあります。


1.太平洋側

 日高地方から西の太平洋側では、比較的温暖で夏に雨がやや多いものの、冬
は晴れる日が多く、雪もあまり降りません。

 十勝地方や釧路地方では、夏の内陸部の気温は本州並みに上がる日もありま
すが、夏の沿岸部は殆ど毎日霧がかかるため、低温の日が続きます。

  注:以下も含めて言う内陸部/沿岸部とは概ね海岸線から20km程度で分けて
   います。

これは内陸の高温で上昇気流が発生し、低気圧状態になっているところへ太平
洋の沖合いから大量の湿った空気が流れ込み、しかもその空気が沿岸を流れる
冷たい海水の上を通過する際に冷やされて、霧が発生するためです。

  「霧の街」と言えば釧路が有名ですが、ある釧路出身者によれば、

      「釧路では気温が20℃を越えると挨拶が『暑いですね』になり、25℃を
      越えると誰も働かなくなり、30℃を越えると暑さで死ぬ人が出る」

のだそうです :-)。

 これが根室地方となると、夏に霧に閉ざされるのは沿岸部に限りません。根
釧台地の殆どや根室半島が牧草地ばかりで畑が殆どないのは、この夏の低温に
適応するためなのです。

 十勝・釧路・根室地方の冬は、北西からの強い季節風が山を越えて吹きつけ
るので全体としては晴天の日が続き、積雪は少ない代わりに厳しい寒さとなり
ます。ただし「積雪が少ない」と言っても春先になって日本海に優勢な低気圧
が現われた時など、しばしば十勝西部で

   道内全体を見ても、この冬いちばんの大雪

に見舞われる時もありますので、完全に春になるまで油断はできません。


2.日本海側

 日本海側は、夏に晴天の日が多く気温も上がります。また太平洋やオホーツ
ク海と比べれば水温が高いため、道内の海水浴場の多くがこの地域にあります。
しかしながら、お盆を越えると海流に乗ってクラゲがやってくるので、すぐに
泳げなくなります。

 冬は大陸から吹き付ける猛烈な季節風に日本海を流れる暖流が水蒸気を補給
し、それが山に突き当たるので、11月から3月ごろまで雪・雪・雪… の毎日と
なります。

 はっきり言って冬の日本海側で雪が止むのは、日本海で強力な低気圧が発生
して季節風が弱まった時*だけ*で、しかもその低気圧が東に進むと、それ以前
にも増して激しい吹雪になります。もしも旅先で晴れの日に出会ったら、幸運
に感謝して時間を有効に使ってください。

 この地域では平地の雪融けも4月近くなってからであり、山間部ともなると、
標高が低くても5月末まで雪が残っている場合があります。また、雪融けの頃
に西風が吹くと内陸は霧に閉ざされますので、観光には向かない季節…と言え
るかもしれません。

# 山菜採りには絶好なんですけど(^^;。


3.道央地方

 冬の道央地方は晴れることが多く、放射冷却現象により零下30℃近くになる
ことも珍しくありません。

#  もっとも、零下30℃になると小学校の始業時間が繰り下げになっていた時
#代には、「街中の最低気温は29.9℃までしか下がらない」という法則 :-)も
#各所で見受けられたようですが。

 気象庁公認の『日本の最低気温』の記録を持っているのが雨竜郡幌加内町の
朱鞠内ですが、この地域には「非公認だが日本最寒」を名乗っている地は多数
あります :-)。

  とにかく寒い地域ですが、その代わり(日本海側と比べると)雪はあまり降り
ません。

 もっとも「降らない」と言っても、あまりの低温で雪がなかなか締まらない
ため、風が吹く度に積もった雪が再び舞い上がってしまい、せっかく除雪した
道路や線路を埋めてしまう…ということが繰り返されるので、除雪の費用も労
力も日本海沿岸とさして変わらないようですけど。

 逆に夏は温度が上がり、最高気温は本州と変わらないくらいになりますので、
道内で最も気温の差が激しい地方であることは間違いありません。もっとも、
道央の夏は暑いといっても「我慢していれば終わってしまう」程度の短期間な
のですが。


4.オホーツク海側

 オホーツク海側は、年間を通じて降水量が少ない地方です。日照率の高さは
全国でも有数です。

 夏は、例年ならば冷涼で非常に過ごしやすい気候なのですが、何年かに一度
やってくる「台風くずれ」の低気圧が優勢なままオホーツク海に入ったりする
と、この地方では珍しい猛暑に見舞われる場合があります。

 冬は長く、降雪自体は少ないのですが、とにかく気温が低いので、いったん
積もると春まで融けません。

 オホーツク海は塩分の濃度が低く、暖流が流れ込ま*ない*ので年間を通して
水温が低いです。このため、2月から3月にかけて海は流氷に閉ざされます。知
床半島の南側は、流氷が接岸する海としては「北半球における最南端」でもあ
ります。

 海が流氷で覆われると、気温よりは水温の方が格段に高いのに〜と言っても
氷点下(^^;〜空気に熱は放散されず、白い氷が太陽からの赤外線を吸収*せず*、
晴れていることが多いので放射冷却が進む…という悪循環で、沿岸部でも内陸
部でも平等に気温が下がります(注:ここ以外の地域では、一般に沿岸部の方が
冬は温暖)。

 宗谷地方のオホーツク海沿岸では、一冬に何度か日本海沿岸に冬の〜そして
束の間の〜晴れをもたらす強力な低気圧が日本海から北海道に接近した時、オ
ホーツク海から吹き付ける凍った風は地上の雪を巻き込み、

   上空は晴れているのに、地表近くは視界が殆どゼロの猛吹雪

というフザけた天気〜「地吹雪」という〜に陥ります。こうなると一帯の道路
は全部「通行止」となりますので、鉄道が失われた現代では諦めて天候の回復
を待つしかありません。

#  まあ、例年なら1シーズンに数回のことですし、よほどのことがない限り1
#昼夜以内に天候は回復する筈ですので…。

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