[3-2-5]自転車の旅 (1999/6/21 Ver.6.00) 1. 自転車で旅をしよう 毎日の通勤やコンビニまでの買い物で使っている自転車も、立派な旅の 道具です。広い北海道、車やバイクで駆け抜けるのも、バスや列車に揺ら れながらあちこち巡るのも素敵ですが、自転車での旅などいかがですか? 自転車で旅をする一番の魅力は, 「2点間を自分の力だけで移動できる」 という点にあると思います。自分の力だけで移動する手段としては、徒歩 ローラー(インライン)スケート、リヤカー、一輪車などがありますが、 速く、長い距離を移動するには自転車が最も適しているのではないでしょ うか。(体力に自信が有れば1日で200km以上走ることも可能でしょう) また,「自力だけで走破した達成感」も大きい魅力の一つです。 長い登り坂の後、峠から美しい景色が見えた時とか、暗くなった路の先に ぽつりと宿の灯りが見えた時とか…「あぁ、ここまで自分の力で走ったん だなぁ」と大きな達成感を味わうことが出来ます。 2. どんな自転車で旅に出よう? もちろん、旅するなら絶対この自転車!なんて決まりは有りませんから 普段使っている自転車でも全然問題有りません。 ここでは代表的な自転車についてその特徴を示してみます。 2.1 いわゆるママチャリ そう、前にカゴの付いた買い物に使うような自転車のことですが、北海 道ではママチャリを使って旅をしている人を数多く見かけます。積載能力 は比較的高いようですが、ギヤの付いてないものも多く登り坂では大変そ うです。街乗りと旅人を見分けるのが難しいのでピースサインを出す時に ちょっと困ってしまいます(^_^;; 2.2 ランドナー・キャンピング車 長距離の旅に適した自転車と言えば、比較的軽装で短期間の旅に向く 「ランドナー」と、サイドバッグを付けた重装備の「キャンピング車」で しょう。キャンピング車でバッグをフルに装備して走っている姿はまるで 大陸横断といった雰囲気を醸し出してくれます。ただ、最近は生産してい る所が減っているので入手しづらいのが難点でしょうか。 2.3 ロードレーサー スピード重視、移動距離重視で旅をするならロードレーサーがお勧めで す。ただ、スピード競技用として作られているため、キャリア、サイドバ ッグの類は取り付けられないものがほとんどで、積載能力はあまり期待出 来ません。それでも最近はシートピラーに取り付けてシュラフ程度を載せ られるキャリアが販売されているようです。 2.4 MTB 最近では入手のし易さや、普段街乗りで使っている人が増えたこともあ ってかMTBで旅をする人を多く見かけます。キャリアやバッグなどのパ ーツ類も充実しているので、今持っている自転車にちょっと手を入れるだ けで旅仕様になるというお手軽さもうけている要因の一つかもしれません。 元々は悪路を走るために考えられたMTB、ハードに北海道の林道を攻め たい!という方はブロックパターンのタイヤが必須でしょうが、舗装路を 主に走る人にはブロックの小さなもの、あるいは全く無いスリックタイヤ に履き替えることをお勧めします。 ブロックパターンのタイヤは舗装路では転がり抵抗が大きいためスピード を出すのにかなりの体力を要する上、せっかく苦労して登った峠の下り、 勢いをつけて次の登りも一気に!と思ってもあっという間にスピードが落 ちてまた必死でペダルを漕ぐはめに… 3. どうやって自転車を持って行く? さて、自転車で北海道を旅しようと思い立ったものの、どうやって北海道 まで自転車を運べばいいのでしょうか? 3.1 輪行する方法 「輪行」とは、自転車を分解し、袋に入れて乗物に持ち込むことです。 この方法でほとんどの公共交通機関に持ち込むことができます。 3.1.1 列車の場合 JRでは自転車を解体、折りたたんで専用の袋に入れることにより、無料 で客室内に持ち込むことが可能です。関東の大手私鉄でも手回り品切符は 要求されなかったとの報告もありますが、各鉄道会社によって対応が異な る場合も有りますので確認の上持ち込むことをお勧めします。 客室内に持ち込んだ自転車は、他の乗客の迷惑にならないような場所に、 倒れたりしないようにベルトなどで縛り付けておきます。特急ならデッキ の手擦りが良いでしょう。サイクリストなら道外でも頻繁に利用している でしょうから詳しくは省略します。 3.1.2 フェリーの場合 以下、3.2 でも触れるように完成車のまま乗せることもできますが、輪 行することで料金が安くなることが多いようです。船内では係員の指示に 従って輪行袋を置きます。広い船内のこと、あまり問題はないでしょう。 フェリーによっては、輪行袋を手荷物として預けると有料で、自分で持っ てフェリーに乗ると無料の場合などがあり、確認が必要です。 3.1.3 飛行機の場合 手荷物として預けることになります。特別な料金は必要ありませんし、 航空会社への事前の連絡なども必要ありません。建前としては国内線の無 料手荷物は 15kg までなので、自転車と荷物を合わせると超過します。 今までに(北海道路線以外も含め)何回か利用しましたが超過を咎められ たり、超過料金を請求されたことはありませんでした。 上空では気圧が低くなるのでタイヤの空気は抜いた方がいいと言われるこ とがありますが、荷物室も客室と同様、予圧されていますから抜かなくて も大丈夫なようです。心配なら少し空気圧を低めにしておく位で良いでし ょう。預ける時に「こわれもの」のタグは付けてもらうとしても、預けた 後の扱いが必ずしも丁寧とは言えない場合もあるそうなので、梱包は厳重 にしましょう。(幸い、私は壊された経験はありません) 輪行袋と自転車の間に段ボールなどのクッションをはさんでおくことが有 効です。帰途、空港で段ボールをわけてもらえるかどうかはわかりません が、新聞紙を何枚かはさむだけでも気休めくらいにはなるでしょう。 ホイールを外したエンド幅が押し潰されて狭くなることもあるようなので 何かはさんでおきます。専用のエンドスペーサーも売られていますが、私 はもっぱらスパナを縛り付けます。どうせ持参するものなので一石二鳥。 到着空港では他の荷物と一緒にターンテーブルに出てきます。 (輪行袋に入れないで完成車のままでも預ってくれるという話を聞いたこ とがありますが、未確認です。) 3.2 完成車のまま運ぶ 荷物満載のキャンピング車などの場合、輪行は事実上不可能です。完成 車のまま渡道するにはフェリーを利用することになります。 ※フェリー以外で完成車のまま運ぶ方法があれば教えて下さい。 大抵のフェリーには自転車料金が設定されています。車両として扱われる 自転車と、手荷物として扱われる輪行袋とでは値段差があることが多いよ うです。荷物の量と運賃とを見比べて選びましょう。 3.3 別送する お近くの運送会社に問い合わせてみて下さい。運んでくれる会社がある かもしれません。この場合、運送会社の営業所止めで送るか、最初の宿に 頼んで受けとっておいてもらうことになるでしょう。 この場合も、梱包はしっかりと。メーカーから出荷時の状態と同じく段ボ ールに入れたり、工夫が必要です。こわれもの指定は絶対です。 宅配便で完成車のまま送ってもらう場合、割高かもしれませんが、輪行 袋で雑に扱われるよりは安心です。しかし、繁忙期には断られるかもしれ ませんので問い合わせが必要です。 3.4 その他 これらの他には、「現地で購入する」、「宿、観光地のレンタサイクル を利用する」という手もあります。旅の期間が短い人、自転車での本格的 な旅はちょっと…としりごみしている人も、まずはレンタサイクルで北の 大地を走ってみてはいかがですか?それでちょっと自信が出てきたら、次 は自分の自転車で… 4. 走行距離と日程 本州などと比べ、北海道の幹線道路は交通量が少なくアップダウンもあ まり有りませんから、1日に走れる距離は伸びます。本州なら 100km/day 位のペースで走る人が北海道では 200km/dayを走破することもさほど困難 ではありません。 #だからといって自分の体力・技量を考えず毎日長距離を走り回るような 計画を立てると破綻しますので慎重に。 特に、最初の2、3日は疲労が蓄積しやすく、辛い思いをしがちです。 体が旅に慣れるまでは、つまり旅程の前半ではあまり無理な計画は避けた ほうが無難でしょう。 それでも北海道は広大で、自転車だけで走り回るには相当長期間が必要に なります。日程のとれない社会人の場合、要所要所を自転車で走り、その 間をJRなどで移動する、いわゆる「周遊券サイクリスト」も存在します。 5. 荷物の持ち方 自転車で走る旅人は、ある意味でもっとも荷物を持てないと言ってもい いでしょう。たくさん積んだら重くて走り辛いのはもちろんですが、輪行 する時は荷物の他に輪行袋を持たなくてはなりませんから、あまりたくさ んの荷物を持つことは不可能です。 基本的な旅のスタイルとしては二輪車と同じなので、携行品、キャンプ用 品などは [3-2-4]二輪車の旅が参考になるとは思いますが、よりコンパク トなものを選ぶ必要があります。さらに重要でない荷物は減らし、できる 限り少ない荷物で済むようにすることです。 #例えば、夏季なら下着の替えは2組持参するだけで充分です。 (毎日洗濯することになりますが ;) できる限り減らしたつもりでも荷物は相当な量になることでしょう。 荷物を運ぶのに、自転車につける方法と身体につける方法があります。 自転車につける場合、フロントバッグ、サドルバッグ、パニアorサイドバ ッグ、リアキャリアなどに分散することになりますが、フロントバッグと サドルバッグの組合せだけで済ますのが軽快です。 (多分に個人的好みを含む:) 身体につけるのは背負うのが中心で、小物をウエストポーチなどに入れる ことになります。 ロードレーサーなど、キャリアのない車種ではそのままではフロントバッ グをつけることができませんので、後付けするかフックキャリアなどを活 用して軽いものを入れ、大物は背負うということになります。 走行中、背中が蒸れることを嫌って背負わない人、逆に自転車の取り回し が重くなるのを嫌って自転車には荷物をつけない人など、さまざまで好み の分かれるところです。 私自身は前者で、フロントバッグに着替えなど宿で必要になるものを中心 に入れ、サドルバッグに輪行袋と工具類などを。ウエストポーチには財布 など貴重品だけを入れて走ります。 自転車の重心は荷物を積まない乗車状態で 約 4:6 で後輪中心に荷重がか かると言われています。荷物を積む時は前輪荷重を増やして 5:5 に近付 けた方が走り易くなりますが、反面、下り坂や急ブレーキで転倒し易くな ります。ご自身の運転技量と相談して下さい。 特にフロントバッグにサイドバッグを二つ付ける時に前に付けると,かな りハンドルが取られやすくなるので気をつけましょう。人によっては、ハ ンドリングが落ち着くという理由で、フロントサイドを好んでつける人も います。 6. 服装 夏でも北海道では肌寒いことがあります。荷物を減らすのは重要ですが、 少なくとも薄手のセーターとウインドブレーカは入れておいた方がいいで しょう。一口に北海道と言っても広いですから、気温、天候はまちまちで す。行き先の平均気温や天候を調べて適切な衣服を準備するようにしてお きましょう。まぁ、いざとなったら現地で調達という手もありますが。 また、逆に天気がいいからと Tシャツで一日走っていると日焼けで火傷状 態になったり、熱が出て旅を続けられなくなることもありますので注意し て下さい。日やけ止めやローションなども出来れば持っておいた方がいい でしょう。 7. 修理道具 道内ではスポーツ車のスペアパーツ入手が必ずしも容易ではありません (もちろん地域によりますが)。事前に充分な整備をしておくのはもちろ ん、必要なスペアパーツを持参しましょう。 自分で修理できれば言うことはありませんが、できなくてもパーツだけは 持っていた方が安心です。 ・ワイヤー類(ブレーキ、ディレイラー)いずれも後用を ・チューブ(チューブラならスペアタイヤ) ・パンク修理セット(チューブラなら針と糸も) ・スポーク(2本程度) ・電球、電池 ・ネジ類 ・油、グリス ・転倒や振動による破損に便利なのが針金とガムテープ ・パーツだけでなく、ニップル回しなどの工具も忘れずに 8. 北海道名物 北海道だけに見られる名物?としては,「バイクの旅人と自転車の旅人 との間のピースサイン」というがあります。バイクの旅人同士、自転車の 旅人同士でのピースサインは北海道以外でも見られる光景ですが、北海道 ではバイクも自転車も同じ二輪、お互いがんばろうぜ!という気持ちを込 めてピースサインが出されているというのを聞いたことがあります。 ピースサインもいろいろで、ノーマルな指を二本立てたVサインや親指一 本でのちょっとキザなものとか。でもバイク乗りの方々、自転車相手だと アクションが大きくなるように思うのは気のせいでしょうか? ガッツポーズにウルトラマンのシュワッチなど… これをされると,やはり「北海道に帰って来たなあ」と感じます。逆にこ れがなければ北海道を自転車で走っている実感が沸きません。 北海道以外でされたら,思わず「北海道」と叫んでしまうほど、北海道的 なのです。 最初はちょっと気恥ずかしいけど、バイクの旅人に向かってピースサイン を出してみてはいかがでしょうか。 しかし…登り坂の途中で笑顔でピースサインを出されると返すのに困るん だよなぁ…(すごい嬉しいんだけど、きっと恐い顔をしているはず) 9. 自転車の旅に迫り来る敵とは? 自転車旅行の大敵には色々ありますが、やはり最大の敵は「向かい風」 です。向かい風になると、ペダルを漕いでも漕いでも自転車は前に進んで くれません。(これがスケートになると後ろへ戻りそう)「反対側車線の 自転車は楽なのに何で俺だけがこんなしんどい目に会わなあかんのか〜」 と思ってしまいます。はっきり言って向こうは40km/h巡行に対してこちら は15km/h巡行だったりします。(宗谷岬→稚内など) また、次の敵は、やはり「雨」、これは良いカッパ(例えば,ゴアテッ クスの合羽)を着る事により少しは不快感も解消されます。また、足には 大きめのポリ袋をかぶせましょう。小さかったらずぶ濡れになります。 次に、「上り坂」。これは,人によれば魅力に入る場合もあります。 まあ、峠の後には必ず(ごくたまに峠からの上りもあるが)下りがあるの で,峠からのダウンヒルに期待しましょう。 とはいえ、どんな峠でも休み休み、また最終手段として「押し」をすれ ば峠に着きます。北海道の峠は,傾斜はそんなにきつくないので何とかな るでしょう。 そして、「トンネル」。トンネルに入ると、暗く、サングラスをかけて いると一瞬、目の前が真っ暗になってしまいます。また、車の音が反響し て道の何倍もの大きな音をさせてこちらに向かって来ます。私はこのとき 車道を走っている場合、ただひたすら「生きて帰りたい」と思い、出来る だけ左により、路面に注意して走行します。 そうそう、「路肩」というのも結構曲者です。トラックの往来の激しい 幹線道路では路肩に大きな轍が出来ていたりします。ぼーっとしていると 轍に乗り上げて転倒ということもありますので注意が必要です。 意外なのが「霧」、せっかく美幌峠をクリアしたのに峠のレストハウス さえも見えなければやはり悔しいです。摩周湖の第一展望台側の坂を必死 になって上ったのに「霧の摩周湖」ではなんとも悔しい限りだったりしま す。 そして、「輪行時の移動」、はっきり言って自転車に乗る時以外、自転 車は邪魔な、それも非常にかさばる荷物に過ぎません。輪行袋を担いで駅 の階段を上り下りするのは、とても大変です。 以上のような「魅力」と「敵」を分かっていれば「自転車旅行は本当に 素晴らしいものだ」と必ず感じる事でしょう。敵が来ても、次に魅力が来 ます。 「人生楽ありゃ苦もあるさ」の精神で行きましょう。 北海道の自転車旅行の魅力は、やはり「大地を走る」と言うことが一番 大きいです。